今が旬の梨、最近ではいろんな品種がでてきて、8月から年明けくらいまでは美味しい梨が楽しめます。私も、一口食べると、やさしい果汁が体に染みわたるような感じがして、大好な果物の一つです。
梨は古来より「百果の宗」、つまりあまたの果物の中の王様と呼ばれ、秋風とともに乾燥が進み始めるこの季節の体を整える効果が期待できる果物です。確かに中国料理や韓国料理で梨を使った薬膳料理を召し上がった方もいらっしゃると思います。
梨は7000年前、中国南西部が発祥とされていて、日本には稲作と同じ頃の弥生時代に大陸から入ってきて、日本で最も古い栽培果実の一つ。日本書紀や万葉集にもたびたび登場し、その後もずっと大切に育てられた果物です。
それもそのはず、「百果の宗」を名乗るだけあり、その効能がとても優れているのです。
夏の疲れが出てくる初秋には、そのみずみずしさで体にこもった熱を冷まし、秋の臓の肺を潤し、のどの不調を和らげてくれます。また美肌効果も高いのも嬉しいです。
梨と生の蓮根を同量すりおろし(ミキサーで混ぜてもOK)、少し蜂蜜を足して作るジュースは、「蓮梨汁」という立派な薬膳です。この時期の気温差でのどを痛めた人、のどを使う人にはおすすめです。二日酔いの後にもおすすめです。また新鮮な芦の根、レンコン、梨、新鮮な麦門冬、黒くわいを生のまま絞った飲み物を「五汁飲」といい、熱病傷津(高い熱によって体液が失われた状態)の口渇に使われます。
ただ梨は体を冷やす性質があるので、冷えるとおなかが痛くなる人、また寒くなる時期には加熱すると良いでしょう。日本ではあまり馴染みがありませんが、お肉などと合わせて炒めると、お肉も柔らかくなり、とても美味しくなります。本場中国ではこのシーズン、宴会料理やハレの席のお料理としても良くつかわれます。
最後に私の梨の思い出を一つ。40年ほど前上海にある「燕雲楼」という北京ダックの老舗料理店で友人達とコース料理をいただいた後、デザートに梨がでてきました。それも小皿に丸ごと一個、小ぶりの西洋梨が載っていてナイフが添えられていました。有名料理店ではデザートに出てくる果物は通常細工を施し、きれいに並べてあるので、不思議そうに梨を見つめている私たちにお店の人が「中国語で梨はリー(梨)、割ることをカイ(開)といいます。同じく人との別れを表す中国語は離開 リーカイ、発音が一緒なので、大切なお仲間の集まりだと切り分けた梨ではなく、丸ごとお出ししました。」と説明くださいました。なるほど、言葉を大切にする中国ならではだなと思い、各々くるくると梨を回しながら皮をむき、そのままかぶりついたのでした。
この秋、皆様もいろいろな梨の食べ方を楽しんでみてくださいね。
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